かぜ薬に関して

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かぜ薬ははたして有効か?

かぜをひいたらお薬を飲んで早く治すはただしいのか?新型コロナウイルスの流行により改めてかぜの諸症状に関する内服薬はどの程度有効なのか検討されるようになりました。小児に関しては以下のようです。

そのエビデンス、妥当ですか? システマティック・レビューとメタ解析で読み解く小児のかぜの薬のエビデンス 榊原裕史監修 大久保祐輔著 金芳堂より

著書の中のまとめをそのまま掲載すると

咳止めについて

小児の鎮咳薬には、コデイン・デキストロメトルファン・チペピジピンなどがあるが、有効性を示した明確なエビデンスはほとんどなく、生来健康な小児のかぜによる夜間の咳に投与するメリットはほとんどない

特にコデインは副作用が強く、日本国内では2019年度より小児への咳止めとしての使用制限が出ている。

母乳から乳児にコディンが移行する恐れがあり、授乳中の母親は咳止めを飲む際にコデインが入っていないか注意したほうが良い。

コデインほどではないが、デキストロメトルファンも副作用が多い。

4歳未満での副作用の報告が多い点から、乳幼児への使用は推奨されていない。

チペピジンは小児科外来で非常によく処方されている咳止めであるが、国内のRCTでは有効性は示唆されなかった。

ハチミツは2歳以上の小児には効きそうな印象であるが、これまでの研究は1晩のみの研究で、23日以上にわたり咳止め効果が持続してくれるかは、やや不明瞭。

1歳未満の小児,抗菌薬投与中の小児,手術後の小児にハチミツは使用しない。

去痰剤について

カルボシステイン

咳止め効果はハチミツよりも弱い(2歳以上が対象)。

痰切りの効果はわずかにあるかもしれない(主に2歳以上)。

副作用は2%ほどの小児で消化器症状(下痢など)が起こる。

稀ではあるが、特に2歳未満は呼吸状態が悪化する可能性が指摘されている。

イタリアやフランスなど一部の先進国では2歳未満の小児への使用は禁忌。

アンブロキソール

①1つのRCTのみだが、肺炎で入院した小児には、咳や痰がらみに有効かもしれない。

外来の気道感染症への有効性は不明。

抗ヒスタミン薬(鼻水を止める目的に処方される薬

第一世代の抗ヒスタミン薬は、市販の小児用総合感冒薬のほとんどに含まれている。

抗ヒスタミン薬は小児のかぜによる鼻汁に多少は有効かもしれないが、眠気・刺激性などの副作用のリスクが高く推奨されていない。

抗ヒスタミン薬は滲出性中耳炎を軽快させる効果はない。※急性中耳炎では禁忌

③第一世代の抗ヒスタミン薬は熱性けいれんを誘発したり、持続時間を延長させる可能性がある。

※花粉症で処方される第二世代抗ヒスタミン薬もフェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン、ビラスチン以外はインペアードパフォーマンス(自覚的な眠気がなくても勉強や仕事の能率が下がる)が起きやすいのでお勧めしません。

ロイコトリエン受容体拮抗薬について

     小児の急性細気管支炎の急性期や回復後の数ヶ月に,喘鳴の再発予防効果を認めるサブグループはありそう。

  1.   アレルギー疾患の既往・家族歴のある小児の急性細気管支炎において,罹患後に長期的に使用すると、喘鳴の再発予防効果はありそう。
  2. 長引く非特異的な咳への使用は行われた研究そのものがほとんどない。

②副作用として下痢のリスクは1.3倍ほど上昇する。

 

トラネキサム酸と気管支拡張薬

エビデンスは不十分で追加検証が必要だが、7歳以上の咽頭発・日内炎に対しては、トラネキサム酸は痛みや喉の炎症を抑える可能性はありうる。※トラネキサム酸をのどの痛みに処方するのは日本だけだそうです。

喘息のない小児の咳に,気管支拡張薬を使用しても咳を軽快させる効果はなく,手の震えなどの副作用のリスクが上昇する可能性がある。※ホクナリンテープなどの気管支拡張作用のある貼り薬は効果発現までに時間かかり喘息発作治療薬でするなくなりました。これも喘息以外の咳には無効です。

ヴェポラップは小児の咳に有効かもしれないが、行われたRCTは盲検化が不十分で,有効性が過剰評価されているかもしれない。

 

整腸剤(プロバイオティクス)について

メタ解析によると、プロバイオティクスは小児の胃腸炎の下痢症状を1日ほど短縮させる。

ロタウイルスワクチンが本格的に導入された近年のRCTでは、プロバイオティクスの下痢・嘔吐を改善させる効果はわずかで、有効性はないのかもしれない。

ヨーグルトは小児の胃腸炎の下痢の期間や減少した体重の改善にほとんど影響しない。

 

止瀉薬について

     ロペラミドの下痢止め効果は強いが,イレウスや傾眠といった副作用があり、小児には使用すべきでない。

天然ケイ酸アルミニウムはウイルス性胃腸炎に関しては安全に使える止薬であるが,本来,自然に沿るはずの胃腸炎に使用する意義は少ないかもしれない。

タンニン酸アルブミンやベルベリンは小児において有効性の評価は不十分である。

 

 制吐薬について

オンダンセトロンは小児の胃腸炎の制吐剤として優れた薬剤だが、小児の急性胃腸炎に伴う嘔吐症状には 2020年の本書執筆時点では未承認である。

ドンペリドンの制吐作用は、オンダンセトロンより弱いか、プラセボと同等という結果が出ており、有効性は不確実である。

メトクロプラミドは、オンダンセトロンやドンペリドンより弱い制吐作用と考えられる。ただし,システマティック・レビューによると9%の小児で錐体外路症状が出たと推定されており、安易に使用すべきではないだろう。

※胃腸炎の治療に関して20年位前からWHOは経口補水療法を推奨しています

※緑字は院長の追加コメント

かぜで病院へ受診するのは無意味かと思われるかもしれませんが、かぜかどうかが重要なので病院に受診することは意義があることだと思います。